検事を辞めた理由 2007年8月の記事改訂
裁判官や検察官は,存在が遠く,現実感がありませんでした。
弁護士は,資格がある自由業であり,その利点のみを片面的に都合よく見ていました。
司法試験に合格し,司法修習生になると,進路に現実味が帯びてきました。
実務修習で,最初に検察庁に配属され,生の事件・検察の現場を見て,目から鱗が落ちました。
全く実感なかったけれど,世の中にはこんなに多くの犯罪があるのか。
これまで平和に暮らせていた(る)のは,警察や検察がしっかり機能していた(る)からだと。
そこで,司法修習中に検察官に進路変更しました。
が,なってみると,多数の事件を並行し,一件終了しても,すぐ新しい事件が来て,常に多忙。
ハードなオンのみならずそれゆえにオフがコントロールできず本末転倒という事態が常態化しました。
検事は4年でほとんどやりきったこと(ほとんどの類型の刑事事件を起訴・公判した),大組織の一員であるがゆえの様々なデメリットを考え,辞めることにしました。
有罪率99.9%と言われますが,検事側から見ると,重いプレッシャー(0.1%の無罪を受けるかもしれない)を絶えず負う辛さもありました。
振り返って,司法修習中に,配属検察庁の次席から言われた言葉を思い出しました。
「検事としては性格がやさしすぎる」
それが,犯人と対峙するときのものなのか,検察という組織で働く上でのものなのかなどは今も分かりません。
東京地検在職中に,配属部の部長から言われた言葉もあります。
それは,ゴルフコンペで偶々同じ組でラウンドした翌日,部長室に一人呼ばれて,何かやらかしたかと焦りつつ入室したときの一言です。
「もっと上司に顔を覚えてもらうようアピールしなさい」
配属され約1年弱もあって,ゴルフコンペで初めて私を知った部長の一言で,見込みがなければ掛けてもらないと思い感動した記憶があります。
が,逆に,そういうことを自分がやっていないと身に知らしめられました。
要は,検事に向いていなかったのだと思います。
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