弁護士の「弁」という漢字の由来・語源
弁護士の「弁」という漢字は,そのもの「弁」を含め,元は4つの漢字(弁・辨・瓣・辯)を当用漢字の字数制限のため集約し,「弁」ひとつを用いるようになっているとのこと。
音読み「ベン」,訓読み「わきまえる」。
元々の4つの漢字の独自の意味は,次のとおり。
1 弁
(ずきん状の)冠。「武弁/弁髦」
2 辨 ※挟まれているのは「リ」
是非・善悪を区別する。正しいか正しくないかを分ける。わきまえる(物事がそうなった理由を知っている)。「弁別/思弁/弁証/弁明」
けじめをつけて処理する。「弁済・弁償/勘弁/支弁/自弁」
弁当。「駅弁/早弁/腰弁 (こしべん) 」
事を処理する。事務をさばく。「合弁/弁理」
3 瓣 ※挟まれているのは「瓜」
瓜の種。瓜の種を含んだ柔らかい部分。
花びら。「花弁」
果物のふさ。みかんなどの肉の一片。
管を流れる気体・液体の流れを制御する(花びら状の)装置・バルブ。「弁膜/安全弁/僧帽弁」
4 辯 ※挟まれている漢字は「言」
理屈を立てて話す。訴える。「弁解/弁護/弁明/弁論/抗弁/答弁」
理屈を立てた議論。述べる。ものの言いぶり。「弁舌/詭弁 (きべん) /訥弁 (とつべん) /熱弁/雄弁」
独特のしゃべり方。方言。「大阪弁/東北弁」
以上からすると,士業で同じ漢字を使う「弁護士」と「弁理士」。元の弁の字は違い,それぞれ「辯護士」「辨理士」となります。
辯護士。つらいの「辛」が2つも挟まる言葉(「言」)の仕事であると読め,確かにそういう一面があると感じるのが正直なところ。
なお,以下備考。
辨には,「辧」(異体字。辨の[リ]が[刀])と「辦」(環境依存文字。「辨」の[リ]が[力])があるとの指摘があります。
ただ,「辦」は「弁」の旧字体ではなく表外漢字で,新字体は存在せず,当て字として「弁」とするとの指摘もあります。ゆえに,「辨」と明確に区別すべきかもしれません。そもそも「辦」は,処理するとの意味。そのため,だとすると,辨理士は,「辦理士」となります。
「辮」という辮髪を意味する漢字もあります。「弁」に集約した字ではないのですが,当て字は「弁」。辮髪を,弁髪と書きますので。
ブログランキングに参加しています
バナーをクリック頂けると幸いです